3To4 vs muro Bo5解説
デートの待ち合わせには30分ほど前には着いておくべきだろう。
14:46着の快速電車で向かっている彼を待つ間には、普通電車が5本ほど停車していっただろうか。
駅のホームから出てくる人を眺めながら、彼の姿を思い浮かべる。
小さな身体に、やや大きめのリュックサック。そして大きな意志。
35度を超えるかという気温の中、駅の改札口で彼を待った。
間も無くして、一件の通知。
「着きましたー!」
その連絡を確認し、スマートフォンをしまう。
荷物を背負い、彼を出迎える準備をする。
改札から多くの人が出てくる。
その中で、1人だけ異彩を放つ人間がいる。
来た。
胸が少し弾んだが、顔には絶対に出さない。
にやけてしまいそうな気持ちを笑顔に変換し、彼に声をかける。
彼という人間に、どうしてここまで魅力を感じるのだろうか。
たいして仲が深いわけではない。
何度かスマブラのオフで顔を合わせた程度の仲だ。
それでも、確かに彼からは感じる。
彼の生き方をどこか参考にすべきだと、自分の直感がそう言っているんだ。
だからこの日は、彼という人間を知る一日にしよう。
そう、心に誓った。
落ち合った僕たちは、まずサイゼリアへと向かった。
もっとお洒落なお店...例えば抹茶の老舗だとかの方がデートには相応しいと思ったが、彼がイタリアンを希望する以上、それ以外に選択肢は無いのだ。
お店に着いて席に座ったとき、まず一つ、読み合いを仕掛けてみた。
「昼飯代は出すんで、好きなもの食べてね」
ここで彼がどんな反応をするのか、それが見たかった。
ここで考えられる選択肢は三つだ。
1.承諾(その場受け身)
2.拒否(転がり受け身)
3.逆に全部出すよと言う(攻撃起き上がり)
どの択を取られても、対応する自信はあったが、基本的には1の択を通してくるだろうと読んだ。結果は当たりだ。
「いいんですか?ありがとうございます」
僕は内心安堵した。
一先ず、彼と言う人間の基本的構造に対する僕の解釈は正しかったからだ。
と思っていたのだが、ここで予想外のアクシデント。
「じゃあ、カルボナーラとドリンクバーで!」
脳みそがパニックに陥った。
彼が二郎系ラーメンを好んで食していることは知っていた。
従って、それ相応の量を食べると言うことだ。
なのに...カルボナーラとドリンクバーだけだって......?
完全にやられた。彼は僕が想定していた読み合いの、さらに一手先を考えていたんだ。
のけぞりキャンセルを仕込んでいたということだ。
日々の生活から読み合いのレベルを深める努力をしなければならないと痛感した。
この流れを巻き返すことが出来ず、1戦目は僕の敗退から始まった。